運営者・制作者
金工職人の髙田邦雄(たかた・くにお/Kunio Takata)は、京都・東山の静かな一角にある工房で、木目金(もくめがね)という日本古来の金属工芸技術に、25年にわたり携わってきた。
髙田の工房は、舞妓さんが行き交う祇園界隈、古門前通に位置している。この通りは、浄土宗総本山・知恩院の門前町として栄え、今なお江戸末期の風情を色濃く残す古美術と骨董の町。白川が流れる石畳の祇園新橋、格子戸の町家、すれ違う和傘の影。そんな歴史的景観保存地区の空気に身を置きながら、髙田は日々、金属と語らい、杢目模様と向き合っている。
木目金との出会いは、髙田が20代の頃。ブライダルリングのオーダーメイド事業をしていた際、お客様からの「木目金の結婚指輪を作ってほしい」とのご依頼がきっかけだった。そこからこの技法の奥深さ、揺らぎのある模様の美しさ、金属とは思えない有機的な手触りに魅了され、気づけば「木目金」が髙田の人生の中心になっていた。
髙田が得意とする杢目金は、継ぎ目や切れ目のない木目模様が指輪を一周し、内側まで模様が続く仕様。
(※注:すべての作品がこの仕様ではなく、その様に注文いただいた時のみ行われる。)
そのすべてを、髙田ひとりの手で、一点一点、最初から最後まで仕上げて「本物の杢目金」を作り続けている。機械やコンピュータは一切使わず、昔ながらの技法と、火と槌、そして静かな時間だけが、彼の道具だ。
なぜそこまで「手」にこだわるのか。
それは、京都の町並みに通じる美意識があるから。
時代が移り変わっても、変わらないものの中にこそ、真の強さと美しさがある——。
そう信じているからこそ、髙田は「京都に住み、京都で作る」ことに深い意味を見出している。
このウェブサイト「mokume-gane.co.jp」は、そんな髙田の杢目金愛の結晶。まだこの技法を知らない人にも、もっと深く知ってもらえたら。京都の町と同じように、何度訪れても新しい発見があるような場所にしていきたいと考えている。
木目金という美しい層が、読む人の心に何かを残してくれることを、髙田は願っている。
運営者・監修者プロフィール
髙田 邦雄(Kunio Takata)
- 職業:金工職人・工房代表
- 所在地:京都市東山区 古門前通
- 年齢:50歳
- 所属:株式会社enishi
- 金工歴:25年
- 得意技法:無継ぎ目の木目金、内側まで模様が続く指輪の一体成形
- 制作信条:手仕事に徹し、火と槌だけで仕上げる伝統の工芸
- 愛読書:このウェブサイトの参考文献

活動と実績
- 東京・名古屋・京都・大阪・神戸で開催している髙田のワークショップで
合計3万人が指輪制作。 - 指輪制作の指導歴:15年以上。指導人数2250人。
- 工房は歴史的景観保全修景地区に所在。
工房周辺の特徴
- 京都市によって歴史的景観保全修景地区に指定される地域に拠点を構える
- 知恩院、祇園新橋、白川、古美術街といった「京都らしさ」に囲まれた環境
- 町家の一角で、金床の音だけが静かに響く工房を運営
趣味・人柄
- 性格:几帳面で、一つひとつの作業に妥協せず取り組む性分。
- 趣味:京都の町歩き、骨董探訪
- 特技:身体と心を整えるために、柔術という武道を続けている。
- 好きな言葉:「人間万事塞翁が馬」──人生で起こる出来事は、一見不幸に見えても実は幸運のきっかけになったり、逆に幸運に見えることが不幸に繋がったりすることがある。
この言葉は、何かが起きたときに、すぐに「これでよかった」「これで不幸だ」と判断するのではなく、長い目で物事を見るべきだと教えている。
髙田はこの言葉を座右の銘とし、目の前の仕事と丁寧に向き合うことが大切だと信じている。
木目金の模様は、火と金属と時間が作り出す、世界に一つだけの記憶。
削り出すごとに表情を変えるその層に、髙田は心の振動を見ている。
京都という町で、いつかお会いできる日を楽しみにしながら、髙田邦雄は今日も杢目金を作り続けている。

